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10月は食品ロス削減月間!【後編】賞味期限の観点から考える食品ロス

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2023.10.03

10月は食品ロス削減月間!【後編】賞味期限の観点から考える食品ロス

賞味期限の観点から考える食品ロス

日本では家庭から出る食品ロスが5割を占めるそうですが、もう半分の5割を占めているのが「事業系食品ロス」と呼ばれる、食品製造や外食産業などから出る食品ロスです。 外食時の食べ残しや、スーパーでの売れ残り商品もこの中に入ります。

今回は、その中でも売れ残りを左右する「賞味期限」に着目し、「賞味期限の観点から食品ロスを考える」をテーマに、スタイルブレッドの品質管理部門責任者、西倉久志(にしくらひさし)に話を聞いてきました。

食品ロス前編「家庭でできる食品ロス対策とは?~料理家 飛田和緒さんインタビュー~」はこちら

西倉久志/株式会社スタイルブレッド 品質管理部門の責任者

「賞味期限」と「消費期限」の違いって?

コンビニなどで販売されている常温の袋パンは「消費期限」ですが、冷凍パンのPan&は「賞味期限」ですよね。食品の期限表示はどんな決まりがあるのですか?

(西倉)  「食品衛生法」と「食品表示法」という法律が定められており、食品を扱うメーカーなどはこれを守らなければいけません。その中に、一般生菌数は10万個以下、大腸菌群は入っていないか、など具体的な決まりが書かれています。当社もそれに従って賞味期限を定めています。

なるほど。食品衛生上の観点として菌の種類や数が細かく決められており、食品として販売してもよい基準になっているんですね。「消費期限」と「賞味期限」の表示はその菌の量が関係しているんですか?

(西倉)  菌は水分や栄養が多いものの中で増えていきます。菌も生物なので、30~40℃くらいの環境が一番増えやすいんです。いわゆる常温ですね。尚且つ、それを阻害する例えばpH(酸性・アルカリ性の程度)が極端でなければ、どんどん菌が増えていきます。 5日以内に「定められている菌の量よりも増える可能性がある」という食品の場合「消費期限」を表示させる必要があります。色々工夫することによって、5日よりも長くなった食品については「賞味期限」表示となります。

▲消費期限と賞味期限のイメージ

(西倉)  「消費期限」は期限を過ぎると食中毒の発生の恐れがあるため期限を過ぎたら食べてはいけません。「賞味期限」は「美味しく食べられる期限」なので、それを過ぎると乾燥したり、変色したりして美味しく食べられなくなりますが、少々期限を過ぎても食中毒などは起きません。

「賞味期限」と「消費期限」では大きな違いがあるんですね。普通に調理して食べるなら「消費期限」だけど、加工したりPan&のように冷凍したり工夫することで、「賞味期限」にできるわけですね。

(西倉)  そうですね。水と栄養を抑えることができれば菌もほとんど増えなくなります。水を抑えた食品として、例えば乾燥の干芋やビーフジャーキーなどの乾物がありますね。あとは塩などにより味を濃くすることも有効です。

自家製酵母に含まれる「乳酸菌」も一役買っている

水と栄養以外の要因としてpH(酸性・アルカリ性の程度)の話が出ましたが、酸性の食品にはどんなものがありますか?

(西倉)  炭酸飲料などは酸性です。お酢が入っている食品も酸性ですね。そういう意味でいうと、Pan&も酸性に傾いています。 Pan&には、群馬県産の全粒粉に存在する菌から起こした自家製酵母種『桐生酵母』を使用していますが、この中には酵母菌[サッカロミセス・セレビシエ]と乳酸菌[ラクトバチルス プランタラム]という2種類の菌が含まれます。 この乳酸菌も酸を強くしてくれる一つの要因となります。 乳酸菌が生み出す乳酸などの有機酸により、複雑な風味も出してくれていますね。

Pan&をリベイクした時に香る、あの食欲そそる香りや食べた時の風味は乳酸菌のおかげだったんですね!さらには、長持ちする要因にもなっていたとは驚きです。

冷凍する工夫で「賞味期限表示」が可能に

Pan&が「賞味期限」表示できる一番の要因は「冷凍しているから」だと思いますが、食品衛生の観点から、冷凍するメリットについて教えてください。

(西倉)  まず、冷凍であることで菌はほぼ増えません。念のため細菌検査は行いますが、基本的には細菌検査の結果が要因で賞味期限が決まるということはほぼありません。 分かりやすい例だと、アイスクリームは水分も多く砂糖も入っており菌は増えやすい食品のはずですが、冷凍しているため賞味期限がありません。 食品を長持ちさせる工夫として、「味を濃くする」「乳化剤や保存料などの添加物を入れる」ことで、水分を抑えることがあります。 このように、味を変えたり余計な素材を使用したりする必要がないことも、冷凍のメリットではないでしょうか。

自信を持って「美味しい」と言える品質を担保

Pan&の賞味期限を決める際「 細菌検査」の他に「官能検査」も実施しているようですが、詳しく教えてください。

(西倉)  先ほど話していたように、冷凍しているため細菌検査は念のための実施ですが、菌はほぼ増えてないものの「劣化」は起きています。食品を冷凍庫にいれておくと、だんだんカピカピしてくることないでしょうか。

確かにありますね。 冷凍庫の中でも乾燥は進むものなんですね?

(西倉)  温度が上がったり下がったり、温度変化があることで水分子の形態が変わってしまい、乾燥につながります。そのため、家庭の冷凍庫は開け閉めが多く劣化が進みやすい環境なので、それを踏まえた上で賞味期限を定めています。

そこまで計算されていたんですね。「官能検査」については具体的にどんな検査をしているのでしょうか?

(西倉)  官能検査は当社のパンをよく知っている社員が食べ、そのパンがお客様に当社のパンとして提供できるかどうかの判断をしています。そのため、食べられますが「味が落ちて当社のパンと自信を持って言えない」というのはNGとなります。

美味しいかどうかを判断するのは、とても難しい検査ですね。苦労することも多いのではないでしょうか?

(西倉)  「当社のパンと自信を持って言える」というのを、どう点数化するかが苦労しました。歯触りにしてもベタベタ、モチモチ、パリッ、モッサリなど色々な感触があります。どの部分が当社のパンの美味しさなのか、また、そのパンの種類の特性に合っているかで合格・不合格を出すことです。

『3分の1ルール』という商習慣の影響

『3分の1ルール』と呼ばれる商習慣があると聞いたのですが、どんなルールなのか具体的に教えてください。

(西倉)  3分の1ルールはメーカー、小売り、消費者が商品の賞味期限の1/3を期限として運用するルールです。例えば120日(約4か月)の場合1/3は40日となります。賞味期限の場合はメーカーである当社は製造から40日以内でないと出荷できなくなります。小売りは製造から80日以内に出荷します。これで消費者は40日以上の賞味期限があることになります。

当社が賞味期限の延長を行ったのも、こういったことが背景にあるのでしょうか。

(西倉)  そうですね。出荷期限が過ぎてしまうと商品として出荷できなくなりすべて廃棄となってしまいます。賞味期限が延長できれば、出荷期限も長くすることができます。こういったことから、食品事業者による食品ロス削減を目指す努力として、かねてより賞味期限の延長の可能性について検討を重ねていました。

スーパーで買う時に1ヶ月以上先の賞味期限の商品が並んでいるのは、各メーカーの努力があるからなんですね。

(西倉)  スーパーなどでも、お客様がより賞味期限の長い商品を購入しようと、並んでいる商品を後ろの方から購入され、手前の賞味期限が少し短くなったものが残っていくと食品ロスにつながってしまいます。 常温のパンは消費期限表示のため、売れ残った場合はすぐに廃棄になってしまいます。その点冷凍パンは解凍すれば好きな時に好きな量が食べられ、賞味期限も長いため廃棄の可能性が低いです。また、頻繁に買い物に行かなくても良いためエネルギーや時間のロスまで少なくなります。冷凍パンをうまく活用してエコな生活をしていただきたいですね。

賞味期限延長を目指して

一人ひとりの買い方の意識を変えるだけでも食品ロス削減に繋がりそうですね。しかし、賞味期限が過ぎていると少し不安になります。Pan&の賞味期限が数日過ぎてしまったものは、食べない方がいいのでしょうか?

(西倉)  冷凍状態というのは、食品が劣化するのを極端に遅らせます。そのため「焼きたての美味しさ」をお客様にお届けできるわけです。できるだけ期限内に美味しく召し上がっていただきたいですが、賞味期限が数日過ぎたとしても食中毒が起きたり、急に美味しく無くなるわけではありません。

「消費期限」「賞味期限」などの期限表示の仕組みを知ることはとても大切ですね。そういえば、最近では賞味期限表示が「年月日」から「年月」に変更されているメーカーもありますよね?

(西倉)  法律では、賞味期限が3ヶ月を超えている物は年月表示をしても問題はありません。当社も賞味期限は3か月を超えているので「年月表示」を検討することができます。 まずは、一般的な冷凍食品と同じ1年くらいを目指しています。検証のために実際長期間保管する必要もあるのでお客様に美味しいパンを提供するため計画的に進めております。

少し思いを馳せてみる

スーパーでの買った食材や外食など、わたしたちがふだん口にする食べ物は「誰かが作ったもの」が多いのではないでしょうか。 ついついその時の場当たり的な感情で、買いすぎて廃棄してしまったり残してしまったり。 少し思いを馳せてみることで、作られた時のことや食品ロスとなってゴミになってゆくことが想像できます。まずは、そんなふうに想像してみることから始めてみるのはいかがでしょうか。 わたしたち一人ひとりの意識できっと食品ロス削減につながります。

前編では家庭の食品ロス対策として「食材を使い切るコツ」をテーマに、料理家・飛田和緒先生にお話を聞いてきました。
10月は食品ロス削減月間!<前編>家庭でできる食品ロス対策とは?~料理家 飛田和緒~

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